昼想夜夢~Misty’s blog~

ネットの時代にテレビ勤め、ジャーナリズムにはまだほど遠い。学術の落ちこぼれだが、たまに考えたことを言いたくなる。/一介电视人,尚未攀上记者之名。心向学术而力不足。偶有三言两语。

新興宗教の長男という生き方

 日本に来るまでは、新興宗教に関する認識はあまりありませんでした。池田大作氏の著書が中国のどこの大学図書館にも「哲学」の棚にずらりと並んでいて、すっかり日本の重鎮哲学者だと思っていた具合だ。

 しかしいざ来てみると、新興宗教の多さに驚いたと同時に、いささか面白く感じていました。幸福の科学も、まさかの生きている人間をも召喚できて、時事ニュースに敏感に反応した霊言本の出版を面白おかしく眺めていた。

 その教祖の長男として生まれ育った宏洋氏が幸福の科学を脱会して、本を出版しました。
books.bunshun.jp

 新興宗教の後継者だと目論まれた人物は、何を語ったかに興味を感じ、読んでみました。

 基本的に、非常に簡単で短い文章で書かれていて、そこまでライターが入っていないだろうと感じました。前後に若干矛盾しているや、きっと自分の行動を美化しているだろうと思うところもありますが、やはり教祖家内部の証言があまりなかった分、面白かったです。

 教団を会社だという風に考えて、「競合他社」のほかの新興宗教や病院などを目の敵にする教祖の姿や、それを理解したうえで安泰な生活の保障として選ぶ子供たちの心中を宏洋氏が描く。しょっちゅう変わる秘書に教育され、離婚する両親のどちらにもとくに情を感じなく、母親につくことを誰も選ばなかったその冷たさが、生まれ育った環境を考えれば仕方がなかっただろうが、やはり可哀そうに思ってしまいます。

 東大法学部を出ていた教祖が、子どもたちに課す高い目標と、信者に進める大卒資格ですらもらえない自身の学園への進学の矛盾や、政治活動への執着など、実に大いにあり得る人物像が浮かび上がります。教祖は、その考えが現実的かどうか、良心的かどうかを別にして、行動力がある人間であることもよくわかります。

 宏洋氏は教祖家を離れたり戻ったりと何回か繰り返していますが、この本は徹底的な離脱を自らを決心させるものでしょうか。生まれにかなり振り回されているが、地道に、素直に、堅実に生きていくことを祈ります。