テレワーク不適合者
新型コロナウイルスのおかげ、いや、のせいで、人生初のテレワークデイが決まった。まさかこの職業でもテレワークができるなんて、とても予想できなかったが、感染症で社会も会社も急に動き出したのだ。
満員電車に乗らなくて済むし、洋服選びも化粧もいらない、お昼は自炊できる、なんて考えたらとってもワクワクしてしまい、小学生みたいに、前日の夜に興奮しすぎてよく眠れなかった。我ながら情けない。
テレワークデイ。早めに会社のパソコンを立ち上げ、VPNをつなげ、社内システムにログイン。パソコンが小さいので、夫のPCスタンドやキーボードも借りてセット。おいしいお紅茶も淹れた。
さて、この日のデスクは容赦ない。かなりの仕事をテレワーカーに振ってくる。いや、これは正しいと思う。本社にいる人間は、鳴りやまない電話やしきりに来る問い合わせに対応しなければならないんだから。しかし、家での作業はすべてのシステムが会社より数秒ほど遅れる小さなストレスの積み重ねに苛まれるうえ、会社の雰囲気がわからなく、勝手に一人で壮絶な追い込みタイム。変なドキドキが止まらなくて、昼過ぎにとうとう「救心」を飲む羽目になってしまった。
そして午後になると、「ああ、誰かとおしゃべりしたい」と思うようになってしまった。テレワークを少しだけ早めに試した人も「孤独」と言っていた。この日をあんなに心待ちにしていた私も、やはり人と関わりたい、他愛のない話をしたいと思ってしまった。こんな話を夫にしたら、「意味わからない」と驚かれたが、やはりコミュニケーションへの渇望がある人がこの業界に集まっていると改めて思った。
これであまりストレス軽減にもつながらず、かえって寂しいという感情を味わってしまったちょっとがっかりなテレワークデイが終わってしまったわけである。
今度、出社することが大きな楽しみになってしまったのだ。